「いつかバーを開業したい」と考えている方は意外と多くいます。
お酒が好きで、自分の城を持ちたい、好きな空間で人と語り合いたい——動機はさまざまですが、いざ開業準備を始めると、情報の少なさと判断要素の多さに戸惑うはずです。
この記事では、実際にバー(夜酒並木)を9年経営している筆者が、バー開業の全体像と現場で本当につまずくポイントを実体験ベースで解説します。
一般論ではなく、9年運営して初めて見えた「開業前に絶対やるべきこと」「後回しにすると痛い目を見ること」をまとめました。
後藤廉夜酒並木を開業して9年経って思うのは、バー経営は「酒の知識」より「人との距離感」がモノを言う商売だということ。
物件選定や資金計画も大事ですが、もっと大切なのは「自分が10年続けたいと思える店」を最初に明確に描けるかです。
この記事では、その軸とともに具体的な開業フローを解説します。
バー開業に必要な資金と全体像
バー開業に必要な総資金
バー開業に必要な資金は平均500〜1,500万円です。
物件規模・立地・内装グレードで大きく変動します。
10坪程度の小規模バーなら600〜900万円、20坪以上の本格的なバーなら1,200万円以上が目安。
立地が繁華街中心部なら家賃・保証金が跳ね上がるため、立地選びが資金計画の根幹になります。
資金内訳
代表的な資金内訳は以下の通りです。
| 項目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 物件取得費 | 150〜300万円 | 保証金10ヶ月+礼金1ヶ月 |
| 内装工事費 | 200〜600万円 | 居抜きで大幅削減可 |
| 厨房・酒類備品 | 50〜150万円 | グラス・シェイカー・冷蔵設備 |
| 初期酒類仕入れ | 30〜80万円 | ボトル・スピリッツ・リキュール |
| POSレジ・決済端末 | 0〜30万円 | SquareやAirペイなら端末費0円も |
| 運転資金(3ヶ月分) | 150〜250万円 | 家賃・人件費・水光熱 |
| 広告費・サイト | 20〜50万円 | SNS整備・看板 |
| 合計 | 600〜1,460万円 | 業態・規模で大きく変動 |
バー開業の流れ10ステップ
STEP1:コンセプトと業態の決定
「ショットバー / オーセンティックバー / ダイニングバー / ガールズバー / コンセプトバー」など、バーには複数業態があります。
自分が10年続けたい業態と、ターゲット客層を最初に明確化しましょう。
コンセプトが曖昧だと、その後のすべての判断がブレます。
STEP2:事業計画書の策定
客単価×席数×回転率×営業日数で月商試算を行います。
バーは飲食店と比べて回転率が低い(1.5〜2回転)一方、客単価が高い(5,000〜10,000円)のが特徴です。
家賃・原材料費・人件費・水光熱費を引いた営業利益を計算し、損益分岐点を明確にしておきましょう。
STEP3:開業資金の調達
日本政策金融公庫の新創業融資が最有力です。
自己資金300万円で1,000万円程度の融資が見込めます。
銀行融資の前に公庫を通すことで、実績ができ、後の銀行融資もスムーズになります。
STEP4:物件選定と契約
バーは立地特性が独特です。
駅徒歩5分以内・繁華街エリアが鉄板。
深夜営業を前提に、近隣からの音・出入りクレームのリスクを必ず確認しましょう。
住居系用途地域では深夜営業届出ができないケースもあるため、物件契約前に警察署で確認が必須です。
STEP5:内装業者の選定
バーは「空間の質」が顧客満足度に直結します。
居抜きでも200万円〜、こだわるなら600万円超が現実的。
デザイン提案力のある業者を選定します。
同業バーの内装を手がけた経験のある業者を選ぶと、現場ノウハウを活かせます。
STEP6:許認可の申請
バー開業に必要な許可・届出は以下です。
- 飲食店営業許可(保健所):必須
- 食品衛生責任者:1日講習で取得
- 深夜酒類提供飲食店営業届出(警察署):深夜0時以降の営業時に必須
- 個人事業主の開業届(税務署)
深夜酒類提供飲食店営業届出は、バー経営の大半が該当します。
条件が厳しいため、物件選定時から「深夜営業可能か」を必ず確認しましょう。
STEP7:メニュー・酒類仕入先の確保
看板カクテル・看板スピリッツの選定を行います。
フードメニューは「ボトルキープに合わせるおつまみ」程度に絞るのがバー定石。
仕入先は2〜3社確保しておくと、欠品リスクを減らせます。
酒類は仕入れロットが大きいため、初期仕入れの過剰に注意。
最初は最低限の品揃えから始めて、お客様の好みに合わせて拡充するのが賢明です。
STEP8:POSレジ・決済端末の導入
キャッシュレス決済対応はバーでも必須化しつつあります。
Square Reader(端末費4,980円)が最もコンパクトで、客単価が高めの店舗にも適しています。
詳しくはキャッシュレス決済端末おすすめランキング12社もご参考に。
STEP9:プレオープンで初動確認
本オープンの1〜2週間前にプレオープンを行います。
友人・知人・近隣店舗関係者を招待し、オペレーション・空気感のフィードバックをもらいます。
このフェーズで本オープン時の問題点を洗い出すことで、初動の混乱を最小化できます。
STEP10:本オープンと初動集客
SNS告知・近隣あいさつ回り・オープニングイベント企画を行います。
バーは口コミ集客が命なので、初動の3ヶ月で「常連化する10〜20人」を確保するのが目標です。
初期常連客が、その後の客層・店の雰囲気を決定づけます。
バー開業で見落としがちな4つの落とし穴
① 深夜営業届出の地域要件を見落とす
深夜酒類提供飲食店営業届出は、用途地域・近隣との距離(学校・病院から100m以内等)に厳しい条件があります。
物件契約前に必ず警察署に確認を。
用途地域が住居系の場合、深夜営業届出ができないため、バー経営の大半が成立しません。
② 売上が安定するまでの「初動の3ヶ月」を見誤る
バーは飲食店と比べて口コミ波及に時間がかかります。
最初の3ヶ月は集客で苦戦するのが通常で、運転資金は最低3ヶ月分必須です。
「黒字化までの想定期間×1.5倍」の運転資金を準備しておくと、初動の悪さで撤退に追い込まれるリスクを避けられます。
③ 立地と業態のミスマッチ
「家賃が安い」だけで選ぶと、ターゲット客層が通らず売上が伸びない結果に。
ショットバーなら繁華街、オーセンティックなら高所得者層エリア、コンセプトバーなら個性立地と、業態と立地のマッチが重要です。
立地調査では、ターゲット客層の通行量・競合店の存在・周辺施設の客層まで複合的に見る必要があります。
④ オーナーが店に立ち過ぎて疲弊
個人バーオーナーの典型的失敗パターン。
週6〜7日深夜まで店に立ち続けて1〜2年で疲弊するケースが多いです。
スタッフの早期育成と、オーナーが現場を離れられる仕組みづくりが長期運営のカギ。
私自身も最初の2年は週7日深夜営業で身体を壊しかけました。
後藤廉私自身、夜酒並木を開業した時に痛感したのが、「深夜営業の届出と近隣との関係」を甘く見ていたこと。
営業許可は取れても、近隣からの苦情が続くと営業停止リスクがあります。物件選定の段階で必ず周辺環境を歩いて確認すべきでした。
バー業態別の特徴とおすすめ
バーには5つの主要業態があり、それぞれ客単価・必要資金・特徴が異なります。
| 業態 | 客単価 | 必要資金 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ショットバー | 3,000〜5,000円 | 500〜800万円 | カウンター中心・1人客多い |
| オーセンティックバー | 6,000〜10,000円 | 1,000〜1,500万円 | ハイクラス・ボトルキープ |
| ダイニングバー | 4,000〜7,000円 | 800〜1,200万円 | 食事重視・グループ対応 |
| コンセプトバー | 3,500〜6,000円 | 500〜1,000万円 | テーマ性で差別化 |
| 立ち飲みバー | 2,000〜3,500円 | 300〜600万円 | 回転重視・低単価 |
バー経営の収支シミュレーション
10坪・8席・客単価6,000円のショットバーを想定した月次シミュレーションです。
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 売上 | 180万円 | 客単価6,000円×8席×1.5回転×25日 |
| 原価(30%) | 54万円 | 酒類・フード |
| 家賃 | 20万円 | 月商の10%目安 |
| 人件費 | 30万円 | スタッフ1名分 |
| 水光熱費 | 8万円 | 電気・ガス・水道 |
| その他経費 | 15万円 | 消耗品・販促・通信 |
| 営業利益 | 53万円 | オーナー報酬込み |
このシミュレーションは1.5回転を達成できた場合の数値です。
実際は開業初期は1回転以下で推移するため、運転資金確保が重要になります。
バー開業に関するよくある質問
Q1. バーテンダー経験がなくても開業できる?
可能です。
ただし1〜2年は他店で修行することを強くおすすめします。
お酒の知識・カクテル技術・接客の引き出しは現場でしか身につきません。
未経験のまま開業すると、現場対応で想定外の問題が頻発する傾向があります。
Q2. 個人事業主と法人、どちらで開業すべき?
年間利益500万円未満なら個人事業主、それ以上見込めるなら法人化を検討。
バー業態は売上の波があるため、最初は個人事業主からスタートするケースが多いです。
法人化のタイミングは、年間利益が安定して500万円超えた時点で検討するのが現実的です。
Q3. 開業から黒字化までどれくらい?
立地と業態によりますが、平均6〜12ヶ月で単月黒字、1〜2年で累積黒字が現実的なラインです。
口コミ波及に時間がかかるバー業態の特性を理解し、初動の苦戦期間を耐えられる資金計画が必須です。
Q4. 深夜酒類提供飲食店営業届出の手続きは?
所轄警察署で届出を行います。
書類準備・図面提出・実地確認で2〜4週間程度。
物件契約後すぐに着手するのがおすすめです。
届出書類は警察署で配布されるので、事前に取りに行って記入要件を確認しておくとスムーズです。
Q5. バーで失敗する最大の原因は?
「コンセプト不明確 × 立地ミスマッチ × 運転資金不足」の3点。
1つでも当てはまると1〜2年で撤退する確率が高くなります。
特にコンセプト不明確は、開業後に挽回するのが極めて難しいため、開業前に徹底的に詰めるべき要素です。
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まとめ|バー開業は「コンセプト × 立地 × 運転資金」で決まる
バー開業は、酒の知識やカクテル技術以上に「自分が10年続けたい店のコンセプト」と「立地・運転資金の現実的な計画」が成否を決めます。
私自身、夜酒並木を9年継続できているのは、最初にコンセプトを明確にして、最低3ヶ月分の運転資金を確保していたから。
これからバー開業を検討する方は、まずコンセプトの言語化から始めてみてください。
物件・資金・許認可は、コンセプトが固まれば自然と道筋が見えてきます。


