「リフォーム会社を始めたいけど、失敗が怖い…」
「開業しても軌道に乗るか不安…」
「他社と差別化するポイントが見つからない…」
リフォーム業界への参入を考えている方なら、こんな不安を抱えているのではないでしょうか。確かにリフォーム業界は参入障壁が低い一方で、競争も激しく、思うように事業が軌道に乗らずに苦戦する経営者も少なくありません。
しかし、そんな厳しい環境の中でも、わずか2年で年商1億円を達成した経営者がいます。今回は30代という若さでリフォーム会社を立ち上げ、順調に事業を拡大させている佐藤さん(仮名)にインタビュー。
リフォーム会社経営の実態や、失敗しないためのポイントについて語っていただきました。
店舗経営者プロフィール

佐藤(仮名)さんは30代、リフォーム会社の経営者。不動産業界での経験を経て、2年前に独立。1年目は「税金の都合もあり」年商4,000万円弱に抑えたものの、2年目は年商1億円を見込んでいます。現在は1人で会社を運営しながら、次のステップとして社員の採用も検討中です。
他社のリフォーム会社と差別化されたサービス
佐藤(仮名)さんのリフォーム会社が成功している理由の一つは、明確な差別化戦略にあります。
「不動産の知識も活かして、お客様が中古物件を購入する際に一緒に物件を見に行き、購入前に柱の部分を診断したりアドバイスしたりしています。多くの方が『騙されて変な物件を買ったら嫌だ』という不安を持っているので、その不安を払拭することに力を入れています」
この「購入前からの関わり」というアプローチは、通常のリフォーム会社には見られない特徴です。また、佐藤(仮名)さんは顧客との信頼関係構築にも注力しています。
「リスクがあるものや可能性があるものは先に伝えて、それを知った上で進めていくというスタンスです。事前に知って納得できた上でリフォームするのと、知らずに『うわ、そうなっちゃった』となるのでは意味が全然違うと思います」
このような誠実な対応が、高いリピート率や紹介につながっているようです。

(お仕事の都合で顔出しや実店舗の公開はNG)
リフォーム会社開業時の不安と乗り越え方

開業前、佐藤(仮名)さんにも不安はありました。特に「会社員の時は業績が悪くても給料が出たけれど、独立したら自分の責任で全てやらなければならない」というプレッシャーは大きかったようです。
「開業して最初の3ヶ月間はドキドキとの戦いでした。1ヶ月目から受注はあったんですが、それがラッキーパンチなのか実力なのか正直わからなかった」
しかし、実際には前職での経験が大きな財産となりました。佐藤(仮名)さんは独立する前に、会社の県外展開の立ち上げを任されていました。
「県外の新規出店を任されたのは、『職人もいない、顧客ルートもない、仕入れ先もない状態でやる』という点で独立と変わらない練習になると思いました。その経験があったので、今回の創業はある意味で同じことを繰り返しただけに近かったんです」
独立時に準備しておくべきこと
佐藤(仮名)さんが振り返って「もっと準備しておけばよかった」と思うことは、取引先の確保です。
「独立前に取引先をもう少し確保しておけばよかったと思います。ただ、どうやって確保するかという課題はありますが…」
また、リフォーム業界で開業する際には、建設業の許可(通称「金看板」)の取得も重要なポイントだと指摘します。
「500万円以上の工事を受注するには建設業の許可が必要ですが、その取得には経営者として5年間の経験が必要なんです。これを知らずに独立すると、5年間は大きな工事を受注できないか、外部から人を雇わなければならない」
営業に頼らない集客戦略
多くのリフォーム会社が積極的な営業活動で顧客獲得を図る中、佐藤(仮名)さんは「営業をせずに結果を上げていく」ことを理想としています。
「営業しないで結果を上げていくのが私の理想です。紹介や不動産屋との取引から仕事をいただくことが多いですね。前回よかったから次もお願いしたいというつながりが生まれてきたとき、軌道に乗ってきたなと感じました」
また、一般的な経営者が参加する異業種交流会などにも懐疑的です。
「異業種交流会も好きじゃないんです。本当に意味あるものもあるかもしれませんが、どちらかというと社長たちが集まって成功体験を発表するような場というイメージがあります」
社員採用と育成の考え方
佐藤(仮名)さんは現在1人で会社を経営していますが、社員採用も視野に入れています。しかし、ただ人数を増やせばいいというわけではないと考えています。
1人目の採用が最も重要
「10人いる会社が1人採用ミスっても大事には至らないかもしれませんが、1人だけの会社が1人目を雇って頑張って教えて、3ヶ月で辞められたら結構無駄金になります。一人目は特に慎重に選びたい」
佐藤(仮名)さんは特に「なぜ社員を雇うのか」という目的を明確にしています。
「社員を増やす理由は2つあります。1つは一緒に頑張る仲間が欲しいという側面、もう1つは純粋に労働力として欲しいという側面です。」
教育のタイミングと内容
社員教育については、ただ忙しくなってから雇うのではなく、計画的に進める考えです。
「自分がこれ以上1人では無理だと思う一歩手前のタイミングで雇って教育する期間を設けたいと思っています。今の段階なら教育もしやすいですし、余裕を持って取り組めます」
リフォーム業界では特に、職人とのコミュニケーション能力が重要だと佐藤さんは指摘します。
「職人さんは50〜60代の方も多いので、若い担当者が指示を出す難しさがあります。例えば大工さんが良かれと思ってやったことが間違っていた場合、やり直しをお願いする必要がありますが、その伝え方が重要です」
「『これ間違ってますよ、なんで間違えてるんですか?やり直しです』というのと、『これちょっと違いますよね、めんどくさいかもしれないんですけど、ここだけ直していただけませんか』というのでは、同じやり直しでも受け取り方が全く違います。相手の気持ちがわかるとか、相手をうまく動かす力が非常に大事です」
お客さんとのコミュニケーションについても同様の配慮が必要です。佐藤(仮名)さんは選択肢を絞り込んで提案し、最終的にお客さん自身に決めてもらうようにしているといいます。
「床の色をたくさん見せるのではなく、お客さんの希望に合いそうな色を数種類に絞って提案し、最終的にはお客さんの口から『これがいいです』と言ってもらうようにしています。そうすることで納得度も高まり、スピーディーに進められます」
人を増やす意味と会社の成長戦略
佐藤(仮名)さんは社員数拡大に対して独自の考えを持っています。単に売上を増やすだけなら人を増やせばいいというものではないと指摘します。
人員拡大と収益の関係
「事業拡大やお店をどんどん増やしていくことはあまり考えていません。人を増やして売上が単純に倍になっただけでは意味がないと思うんです。例えば、1人の会社が2人になって売上が倍になったとしても、人件費も倍になるので、会社に残る利益は変わらないかもしれません」
佐藤(仮名)さんは人を増やすなら、それに見合う以上の売上増加が必要だと考えています。
「人を増やすなら売上が1.2倍〜1.5倍になる見込みが立つまでは考えていません。そうでなければ、法人としてはメリットがないことになります」
持続可能な成長モデル
無理な拡大よりも安定した成長を目指すという佐藤さんの経営哲学は、長期的な視点に基づいています。
「今年の売上が200%になったとしても、その次の年に80%になるような波がある大きな成長よりも、波がない小さな成長をずっと繰り返していく方が会社として正しい姿だと思っています。目の前にある大きな利益に飛びつくよりも、将来的な継続的な成長を意識しています」
これは一時的な成功ではなく、長期的な信頼関係を構築することを重視する佐藤(仮名)さんの基本姿勢にも通じています。
「1件の仕事で何としてもこれだけ利益を取ろうというよりも、将来的な長いお付き合いにつなげることを大事にしています。そのため利益率も業界平均の30〜35%ではなく、20〜25%程度に抑えています」
これから独立を考える人へのアドバイス

リフォーム業界での独立を考えている人に対し、佐藤(仮名)さんは「最初の1件の取り方」についてアドバイスします。
「1件目は皆さん欲しいから、『最初は友達価格で10%の利益でやります』となりがちですが、それをやるとその会社はその金額という基準ができてしまいます。目の前のものに飛びつく前に、一回冷静になって考えた方がいい」
また、価格競争ではなく品質や丁寧な対応で差別化することを勧めています。
「現場が欲しかったら価格で頑張るんじゃなくて、普段より手間をかけるという方向で進めるべきです。例えば接触回数を増やしたり、見積もりの経過報告をこまめに入れたり。そういう『やりよう』を思いつく人と思いつかない人で差別化が図れると思います」
まとめ
佐藤(仮名)さんのインタビューから、リフォーム会社開業で成功するためのポイントが見えてきました。
- 他社との明確な差別化戦略を持つこと
- 独立前に十分な経験と準備をすること
- 建設業許可など業界特有の知識を身につけること
- 価格競争ではなく、品質とサービスで勝負すること
- 無理な拡大より、安定した成長を目指すこと
リフォーム会社の開業を検討されている方は、ぜひこれらのポイントを参考にしてください。適切な準備と戦略があれば、佐藤(仮名)さんのように短期間で安定した経営を実現することも可能かもしれません。
編集記後

今回のインタビューを通して、リフォーム業界で成功するために必要なのは派手な営業戦略や大規模な投資ではなく、着実な経験の積み重ねと顧客本位の姿勢だということを強く感じました。佐藤(仮名)さんの「急激な成長よりも持続可能な成長」という考え方は、どんな業種にも通じる普遍的な経営哲学ではないでしょうか。
特に印象的だったのは、佐藤さんが語る「お客様の不安を払拭する」というサービスへのアプローチです。リフォームという高額かつ生活に直結するサービスにおいて、顧客の不安や懸念を事前に解消することの重要性を改めて認識しました。
また、従業員の採用や教育についての考え方も非常に現実的で参考になります。特に「一人目の採用」の重要性は、小規模事業者にとって見逃せないポイントでしょう。安易に人数を増やすのではなく、収益性を見据えた計画的な人員配置を考えるという視点は、多くの経営者に示唆を与えるものだと思います。
佐藤(仮名)さんのような若手経営者がしっかりとした経営理念と戦略を持ち、着実に成功を収めている姿は、これからリフォーム業界に参入しようとする方々にとって、大きな励みになるのではないでしょうか。
コメント