「地域の方々を大切にする」
千葉ニュータウン内にある「R Baker the Green」。パンやピザ、カレーなど多彩なメニューと落ち着いた空間で地元の人々に愛されるベーカリーカフェです。店主の高谷さんは開業から5年、試行錯誤を重ねながら地域密着型のカフェ経営を続けています。
店舗経営者プロフィール

ベーカリーにて3年の勤務を経て独立開業。店主の高谷さんはパンづくりの技術と経営の知識を組み合わせ、単なるパン屋ではなく、パンとカフェを融合させた多彩なメニューを提供する店舗を展開。
「地域に愛されるカフェを作りたい」という原点

「地元の人に愛されるカフェを作りたいという思いがあったんです。この地域で新しいライフスタイルを広めたいと思い、ベーカリーカフェという形でスタートしました。パンが大好きで、プラスで地域社会に貢献できればいいなと思って」
高谷さんは以前、別のベーカリーで3年間働いた経験があります。その経験を活かし、念願のカフェオーナーとして独立しました。
カフェ開業までの道のり:物件選びから資金調達まで

物件選び:立地と環境が命
「物件選びでは立地を重視しました。新しい賃貸施設でアクセスの良さを条件にしました。家賃や管理費が自分の負担にならないよう、しっかりと計算して選びました」
カフェビジネスでは立地が集客に直結します。高谷さんは物件を選ぶ際、アクセスの良さだけでなく、家賃や管理費のバランスも考慮。将来の経営を見据えた物件選びを心がけました。
資金調達:計画性が鍵
「資金調達はビジネスプランを作成して、銀行からの融資と自己資金を組み合わせました。事業計画をしっかり立てた上で、将来のリターンを見込んで投資しました」
カフェ開業に不安はつきものです。高谷さんも「銀行の審査が通るかどうか」「投資が回収できるのか」という不安を抱えていました。しかし、綿密な事業計画と数字に基づくシミュレーションで、無事に融資審査を通過。開業資金を確保しました。
開業初期の苦労:半年間の集客苦戦期
カフェをオープンして最初の半年間は厳しい日々が続きました。
「最初はお客さんがなかなか集まってこなくて、営業に苦労しました。周辺には既存のパン屋さんが多く、お客さんはそちらに行ってしまうのではないかと不安でした」
差別化戦略で活路を見出す
集客に苦戦した高谷さんは、差別化戦略を練り直します。
「パン屋とカフェを融合させた店舗という特徴を活かし、パンだけでなくピザやジェラート、カレーやハンバーグなど様々なメニューを提供するようにしました。ターゲット層は地元のファミリー層や近くの会社員、週末にゆっくり過ごしたい方。30席の座席を用意して、落ち着いた雰囲気を大切にしています」

この戦略転換が功を奏し、オープンから半年後には徐々にお客さんが増え始めました。パンだけでなく食事メニューも充実させることで、小腹が空いた時だけでなく、しっかり食事をしたい時にも立ち寄れるカフェとして地域に根付いていったのです。
集客・リピーター獲得の秘訣
SNSの活用で効果的に情報発信
「集客にはSNSが効果的でした。InstagramやLINEでの情報発信、クーポン配布が意外と効率よく、人が集まってきました。最近は地元の飲食店を紹介しているYouTuberと連携してPRもしています」
高谷さんは、自身もYouTubeで地元の飲食店PRを視聴して勉強していたそうです。そんな中、自店が知られるようになり、YouTuberから声がかかるという嬉しい展開に。
リピーターを増やす3つの施策

固定客を増やすために、高谷さんは次の3つを実践しています。
- ポイントカード制度の導入
- 季節ごとの限定パンの販売
- スタッフがお客様の顔を覚えて積極的に声をかける
特に3つ目の「顔を覚えて声をかける」という取り組みは、地域密着型カフェならではの強みです。高谷さんはスタッフ教育にも力を入れ、お客様との信頼関係構築を大切にしています。
物価高騰時代のカフェ経営術
昨今の物価高騰は飲食店経営にも影響を与えています。高谷さんは仕入れ価格の上昇にどう対応しているのでしょうか。
「価格設定は見直していますが、すぐに値上げには踏み切らないようにしています。まずは商品構成の見直しやロスの削減に取り組んでいます」
価格が急に上がれば、お客様は離れていってしまいます。高谷さんは顧客離れを防ぐため、店舗運営の内部効率化を優先しているのです。
カフェ経営から学んだ「他業種との連携」の重要性
カフェ経営を通じて、高谷さんの考え方にも変化がありました。
「最初はカフェだけでやっていこうと思ったんですが、意外と関係のないような温泉や動物病院、保育園などと連携することで集客にもつながりました。市内の方に印象を与えることができ、繁閑期の差も少なくなりました」
他業種との連携は、カフェ単体では思いつかなかった新しい集客方法を生み出します。高谷さんのカフェは、年間を通じて安定した集客を実現しています。
新たな挑戦:ECサイトで冷凍パン販売へ
店舗経営5年目を迎え、高谷さんは新たな挑戦を計画しています。
「今後は冷凍パンをオンラインで販売していきたいと考えています。遠方のお客様にも当店の味を届けたいですし、家庭でも手軽に楽しめる商品提供を目指しています」
ただし、拡大のスピードには慎重です。
「量より質を重視しており、無理な拡大はしない方針です。しっかりした体制を整えてから、地域密着型の小規模展開を見据えています」
カフェ開業を検討している方へのアドバイス
最後に、これからカフェを開業したい方へのアドバイスを伺いました。
「何のためにお店をやりたいのかという軸を持つことが大事です。流行や数字に惑わされず、ぶれない思いがあれば、つらい時も乗り越えられると思います。すぐに結果を求めず、小さな成功体験を積み重ねる気持ちで、無理せず続けていってほしいです」
高谷さんは開業から5年間、地域の方々を大切にする姿勢を貫いてきました。
「パンを買ってくれた方々への感謝の気持ちを忘れず、お客様の顔を覚えたり、時にはサービスを多めに出したりすることで信頼関係が成り立っています」
カフェ経営の道のりは決して平坦ではありませんが、地域に根差し、お客様との信頼関係を築くことで、持続可能なビジネスになると高谷さんは語ります。
店舗情報
- 店名:R Baker the Green
- 営業時間:8:00〜19:00
- メニュー:パン各種、ピザ、ジェラート、カレー、ハンバーグなど
- 座席数:30席
編集後記

カフェ経営の道のりを語ってくださった高谷さんのインタビューを通して、店舗経営の奥深さを改めて感じました。特に印象的だったのは、数字や流行に惑わされず「なぜこの店をやりたいのか」という軸をブレさせない姿勢です。
開業当初の集客苦戦、物件準備の遅れ、スタッフ教育の難しさなど、様々な壁にぶつかりながらも、地域に根差したカフェとして成長されてきた5年間の歩み。その背景には、お客様の顔を覚え、地域の人々との信頼関係を大切にする高谷さんの誠実な経営哲学があったのだと思います。
また、単なるパン屋やカフェの枠を超え、動物病院や保育園など異業種との連携を模索する柔軟な発想力も、安定経営の秘訣なのでしょう。今後は冷凍パンのECサイト展開という新たな挑戦も控えており、高谷さんと「グリーン」の更なる発展が楽しみです。
これからカフェ開業を目指す方々にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。最後に、お忙しい中インタビューに応じてくださった高谷さんに心より感謝申し上げます。
※本記事は「店舗経営のオキテ」が独自に取材した内容です。掲載の情報は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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